Gambir Sawit (1)

 Lokananta CD 解説文シリーズ。「Gambir Sawit」の第1回目です。解説文がトラックごとに分かれていないので、話の切れ目で適当に分割して進めようかと思います。


Gambir Sawit

 「Gambir Sawit」。ヒンズー教と仏教の国であったかつてのマジャパイト王国は、最終的にイスラムの力に屈することになりました。

 「Gambir Sawit」は、マジャパイト王国が終わろうとする時期に、ヒンズー教や仏教の人々がイスラムに改宗できるということを祝福している、そんな楽曲です。1478年にはマジャパイト王国は、イスラムが王国に入ってくることを拒んでいました。多くの人々はイスラム改宗を決心していましたが、Sunan Kalijaga は「Gambir Sawit」という曲を作ることによって、そうなることを祝福しました。この曲では、イスラム改宗が幸福なことであり、強いられたことではないと言うことが表されています。

 「Gambir Sawit」は、中部ジャワのレパートリーの中で、軽い古典曲の主要な一つです。ラドラン全般や速度の速い楽曲をマスターした後に、音楽家がまず学ぶものの一つです。

 この曲は、ソロまたはジョグジャのスタイルで演奏するガムランの音楽家たちによく知られたものです。軽い古典曲とされているのは、形式が長めであるためです。そのためジョグジャや特にソロでは、ルバブ、グンデル、シンデンがより即興的になります。即興の余地が多いので、軽い古典曲とされるのです。

 このCDは Gambir Sawit 組曲です。「bawa sekar」つまり「花」の歌が曲の導入に置かれます。これは男声の独唱で、「Sekar Ageng」つまり「大きな歌」と呼ばれる形式で唱われます。

 その旋律には名前があって、「Rara Turidha」と言います。この導入の歌は4行詩です。歌い手が4行目に来ると、5回目のゴングへとつながる旋律が現れます。

 このCDは、「Gambir Sawit」の主題に基づいた様々なヴァリエーションからなっています。音楽家たちは何年にも渡って、「Gambir Sawit」に新しい編曲を施したのです。これらのヴァリエーションは、音楽的な技術という点では、異なったものを基礎にしています。

(つづく)


(メモ)

  • Majapahit empire ・・・マジャパイト(マジャパヒト)王国。時代は1293〜1520年頃で、最盛期は14世紀中頃。ジャワ最後のヒンドゥー文化の黄金期を築いた。

 即興の余地が多いと「軽い」と言うのは、何かすごく面白い。ハードバップは重くて、モードジャズは軽い?フリージャズはもっと軽い?演奏者に選択の余地が与えられるのは、腕に覚えがあるなら、とても楽しくて心も軽やかになるのだろう。